名刺は、企業のブランドイメージによってさまざまなデザインがあります。
中でも、旅館や料亭といった日本的なイメージを持つ業種・業界では、名刺も和風にデザインしてブランド力をUPさせたいものです。
そこで今回は、和風の名刺をデザインするコツについて、次の3つのポイントをご紹介します。
和風名刺を使って、自社のブランドイメージを的確に伝えたい方、どうぞ最後までお付き合いください。
名刺で和風のブランディングをしたい場合は、和を感じる用紙を選択することがポイントです。
例えば、用紙には大きく分けて和紙と洋紙の2つがあり、それぞれ持っているイメージも違います。
一般的な名刺に使われている用紙の多くは、洋紙に分類されるものがほとんどですが、和紙を使うことで他社との差別化にもつながるでしょう。
和風のブランディングで用紙を選択するには、次の3つのポイントに注目します。
この3つの特徴を持った用紙を選ぶことで、和風名刺はぐっと格調高いブランド力を増すのです。
和を感じさせる用紙には、例えば次のような種類があります。
手漉き和紙は、日本古来の製法で作られた和紙です。
通常の紙を使った一般的な名刺のように、大きな紙に印刷したものを裁断する方式ではなく、最初から名刺サイズに作られた用紙なため、4辺には自然な「ヨレ」ができています。
用紙全体に細かい繊維の模様が散りばめられ、まるで花びらを散らしたようなイメージの用紙です。
昭和天皇が即位された「大礼の儀式」にちなんで作られた和紙の1種で、冠婚葬祭や式典などフォーマルを求める案内状などに利用されることも多く、格調高いイメージを持っています。
大礼紙が和紙なのに対して、同じようなデザインをより扱いやすく印刷や加工も容易な洋紙にアレンジした用紙です。
「うすちゃ」や「さくら」など、和名をつけた中間色のカラーペーパーもあり、和のイメージをかきたててくれます。
名刺ではよく用いられる、硬く表面がなめらかなケント紙の一種です。
一般のケント紙よりもワンランク上の高級紙に分類され、厚みと腰の強さが特徴で、細かな紙の繊維を感じさせる紙質は、印刷のノリもよく落ち着いた印象を与えてくれます。
表面にエンボス加工(紙表面をプレスして凹凸を作り出す加工法)を施して、紙全体に人工的な模様を作り出した用紙です。
和紙を模した繊維のような模様や、桜の花や波模様など、細かい凹凸を付けることで、手ざわりも和紙のようなざらついた印象を実現しています。
和風の名刺を作るには、紙以外の選択肢として「木製」素材を使うのもおもしろい試みです。
ヒノキや杉の端材を極薄加工した木製素材は、天然由来の節目模様など1つとして同じものがない特性に加え、ほんのりと木の香りもするため、非常に上質で高級感のある特別な名刺が作れます。
用紙の次に気をつけるべきことは、フォント(書体)の選択です。
筆で書いたような日本独特のフォントや、海外の活版印刷由来の活字調フォントまで、その種類はさまざまなため、選択次第で名刺のイメージを大きく変化させます。
フォントを選ぶ際のポイントは、主に次の3つです。
ビジネス名刺を和風に仕立てて、企業のブランディング力を上げるためには、あまりカジュアルなフォントはふさわしくありません。
そこで、ここではビジネス名刺で使える「和を感じさせる」フォントの代表例を、5つご紹介します。
印刷用フォントとして有名な明朝体を手書きにしたような、線の太さに強弱のある書体です。
1本1本の線をつなげずにしっかりとトメやハネが表現されていて、より厳格な印象を与えてくれます。
楷書体よりも、さらに筆で書いた印象が強いフォントです。
1本1本の線をつなげたりくずしたりしているため、よりなめらかでやわらかい印象を与えてくれます。
行書体をさらにくずして書いた、線と線が流麗につながっている筆文字フォントです。
手書き感が強く個性的な文字になる反面、筆文字になれない人には読みづらく感じる場合もあります。
お札や印鑑などに使用されることも多い、古くから使われる線が太く印象的な漢字フォントです。
年賀状の賀詞などにも使用されるように、威厳のある格式高いブランディングを表現してくれます。
社名や個人名など、名刺の中でもっともポイントとなる言葉を表現するには、あえて印刷用のフォントを使わずに、毛筆の手書きをスキャナなどで取り込んで使用するのもおすすめです。
一部のオリジナルフォントなどでは、有名な書家などが書いた文字をフォントにしたものも見受けられます。
和風名刺を作る場合、用紙、フォントに続いて問題となるのがデザインのバランスです。
ここでは、和を感じさせるデザインのポイントをいくつかご紹介します。
日本語の表記といえば縦書きであったように、古式正しい和風名刺といえば縦型というイメージがあるかもしれません。
しかし、縦型縦書きの名刺は、同じ和風名刺でも少し硬い印象を与えてしまいますので、あえてやわらかくラフなイメージを演出したい場合は、横型や横書きを使うのがよいでしょう。
レイアウトの縦横にはこだわらず、自社の狙うイメージがどこにあるのかを考えるのがポイントです。
和風名刺では用紙の色を考えるのと同時に、インクの色を考えることも大切です。
紙色とンク色の相性は特に重要で、どちらも「黒・白・青」などの原色系を利用するよりも、中間色をうまく配色するほうが、より和をイメージさせることができます。
など
日本の伝統色などを参考にするのも良いでしょう。
和食大辞典~日本の伝統色465色の色名と16進数
店舗型ビジネスなどでは、店内写真や料理、商品などの写真画像を名刺に印刷し、自社イメージをアピールしたい場合もあるでしょう。
しかし、和の名刺を作る場合は、あえて写真画像などは利用せず、和書体のテキストのみのデザインとしたほうが、和のイメージを強くアピールすることができます。
近年では、メルアドや企業ホームページ、あるいはSNSアカウントなど、名刺に多くの横文字データを記載する場合もあります。
しかし、こうした横文字データは筆文字系フォントなどでは視認性が弱く、かといって欧風フォントなどを使用すると、せっかくの和風イメージを損ないかねません。
そうした場合は、表面は最小限のデータのみ記載し、URLなどの横文字データは裏面にまとめて欧風フォントで表記するなどの工夫をするとよいでしょう。
和風のイメージをアピールしたい業種・業態などでは、名刺を和風とすることで、より積極的なブランドアピールへつながります。
しかし、単に「厳格そうなイメージ」といった理由だけで和風名刺を作ったところで、ブランドがめざすイメージといちじるしくかけ離れたデザインとしてしまっては、ブランディング的にはマイナスです。
ここでは、和風デザインが与えるイメージと、和風デザインが向いている職種の例を掲載しておきますので、名刺作成時の参考としてください。
一般的なビジネス名刺よりも注目性が高く、一風変わった個性的なアピールができる和風名刺を作成する際のポイントについて解説しました。
和風名刺を作る際には、用紙、フォント、デザインのバランスをトータルして、和を感じさせるものとする必要があります。
この3要素をうまく組み合わせ、自社のブランドを顧客にうまくアピールする名刺を作ることができれば、名刺をわたした相手に自社のブランドイメージを強く印象に残すことができるでしょう。
もしも配色などのバランスが自分ではうまくできない場合は、印刷業者やプロのデザイナーに相談するなどして、ぜひとも和風名刺という印象的かつ強力なビジネスツールを手に入れてください。